日本の家族のあり方の一つの典型として「ホテル型家族」というタイプが存在することを、小此木啓吾が指摘している。「ホテル型家族」の場合、家の構成要員各人は、寝るためにだけに家に帰ってくるのであり、各人の個室はホテルの客室とまったく同じ機能のものだ、というのが小此木の指摘である。「ホテル型家族」は日本の家族形態の主流である。特に中学生以上の子供の存在する家庭は、多かれ少かれホテル的様相を呈している。「ホテル型家族」で育った子供達が、独立してもなお、ホテルの客室のような住居を指向する。
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こういう説明も可能である。そして彼らは事実独立する。両親とは別に住むわけである。独立してなおホテルの客室のような空間に閉じこもるのはなぜだろうか。それは小此木の「ホテル型家族」だけからは説明できない。なぜなら「ホテル型家族」の説明においては、家族から隔離されるために、彼らはホテルの客室に閉じこもるという説明がなされていたからである。ワンルームマンションに住む人間にとって、家族からの隔離はすでに必要がない。では何が彼らをして、ホテルに向かわせるのか。彼らにとってホテルは次の二つのものを象徴している。言い方を換えれば、彼らにとってのホテルは、次の二つのもののメタファーである。一つは旅であり、もう一つは性的なものだ。ホテルは基本的には旅人のものである。旅人は一ヵ所に定住することなく浮游する存在であり、ホテルは彼らのための一時的な(テンポラリーな)滞在場所である。